バイオリンを弾いたり、教えたりしていると、
ふと立ち止まって考えることがあります。
楽器の持ち方
弓の持ち方
左手の形
音階
ボーイング
どれも地味な練習です。
でも、私はそれらをとても大切にしています。
なぜなら、それは技術のためではないからです。
⸻
私は若い頃、山登りが好きでした。
ある時、「山頂を目指さない登山の会」という名前で仲間と山を歩いていました。
山頂だけを目指すと、登山は苦しくなります。
途中に咲いている花も、
美しい沢の音も、
風の気持ちよさも、
急いで通り過ぎてしまいます。
もちろん山頂に立つことは嬉しいことです。
しかしながら山頂もまた通過点です
また次の道が続いています。
私にとって登山の楽しさは、
山頂だけではありませんでした。
歩くことそのものが楽しかったのです。
⸻
最近、そのことは音楽とよく似ていると思うようになりました。
技術だけを追いかけると、
難しい曲を弾くこと、
速く弾くこと、
弾くだけが目標になってしまいます。
でも、それは本当に音楽でしょうか。
私は違うと思います。
私たちが目指しているのは、
音楽です。
だから私は、
楽器の持ち方を大切にします。
弓の持ち方を大切にします。
左手のセットアップを大切にします。
ビブラートも
音色も
すべてその先にあるものです。
⸻
最近、もう一つ気づいたことがあります。
私が探していたのは、
身体が自然に動くこと
楽器が自然に響くこと
無理のないビブラート
無理のないボーイング
それらはすべて、
自然の法則の中にありました。
だから私は、
良い音楽をするために弦も交換します。
良い道具を探します。
セットアップを考えます。
しかし、それらは目的ではありません。
⸻
最近、自分自身によく問いかける言葉があります。
私は、その答えは昔も今も変わりません。
⸻
そして、今日あらためて思いました。
音楽には山頂はありません。
あるのは通過点だけです。
だから焦る必要はありません。
一歩ずつ歩けばいい。
一音ずつ積み重ねればいい。
私はこれからも、
歩くことそのものを楽しみながら、
一音一音積み重ねていきたいと思います。